バリカンを入れた瞬間、“雪”が落ちてきた。医者の一言で、私の人生が変わった
——あの頭痛は、ただのストレスじゃなかった。
半年前から、ずっと頭が痛かった。
ズキズキするわけじゃない。重くて、鈍くて、逃げ場のない痛み。
朝から痛い。
夜も消えない。
寝ても、回復した感じがしない。
最初に行った病院で言われたのは、
「ストレスですね」
次も、その次も、同じだった。
「疲れが溜まってますね」
「少し休みましょう」
「考えすぎですよ」
薬も出された。
でも、何も変わらなかった。
むしろ——悪くなっていった。
だんだん、人の声が気になるようになった。
誰もいないはずなのに、
小さく何かが聞こえる気がする。
気のせいだと思った。
そう思わないと、怖かったから。
だから、そのことは誰にも言わなかった。
「またストレスって言われるだけだ」
そう思って、全部飲み込んでた。
そんな時、友達が言った。
「一回、別の先生行ってみなよ」
半分諦めながら、その病院に行った。
年配の医者だった。
話を一通り聞いたあと、
じっと私の頭を見て、こう言った。
「……一度、剃りましょう」
意味がわからなかった。
でも、もう何でもよかった。
原因がわかるなら、それでいいと思った。
その場で、椅子に座らされた。
バリカンの音が鳴る。
ジョリ、ジョリ——
髪が落ちていく。
その時だった。
ザラッ……
何かが落ちる音がした。
最初は気のせいかと思った。
でも違った。
バリカンを進めるたびに、
白い粉みたいなものが、ボロボロ落ちてくる。
まるで——雪みたいに。
「あれ……?」
鏡を見て、言葉を失った。
頭皮の半分が、白く覆われている。
フケなんてレベルじゃない。
厚く、固く、層になって貼りついてる。
まるで、頭に“殻”をかぶってるみたいだった。
バリカンはすぐ詰まった。
医者は一度止めて、静かにそれを見ていた。
「……これ、いつからですか」
その声が、少し低くなった。
「わかりません……」
正直に答えた。
こんなの、自分でも見たことがなかった。
医者は少し考えて——
でも、病名は言わなかった。
代わりに、全く違うことを聞いてきた。
「最近、ありませんか」
「誰かに見られてる気がする、とか」
心臓が、一瞬で跳ねた。
「……」
言葉が出なかった。
続けて、こう言われた。
「誰もいないのに、声が聞こえる感じ、とか」
——なんで知ってるの?
頭の中で、それしかなかった。
ずっと隠してきた。
誰にも言ってない。
それを、この人は当たり前みたいに言った。
「……あります」
気づいたら、そう答えていた。
医者は、静かに頷いた。
「やっぱりね」
そして、私の頭皮を指さして言った。
「これは原因じゃないです」
「結果です」
意味がわからなかった。
医者は続けた。
「長い間、ちゃんと眠れてないでしょ」
「神経がずっと休めてない状態です」
確かに、眠れていなかった。
でも、それが全部だと思ってた。
「問題は、その原因です」
医者は少し間を置いて、こう言った。
「あなたの部屋、静かじゃないですね?」
「……え?」
「低い音とか、振動とか、ありませんか」
その瞬間、全部が繋がった。
壁の向こう。
夜中でも、微かに聞こえる音。
話し声。
機械みたいな低い振動。
気にしないようにしてた。
「気のせいだ」って、何度も思い込んだ。
でも、体はずっと反応してた。
「それです」
医者ははっきり言った。
「その環境で、脳がずっと起きたままなんです」
「休めない状態が続いて、神経が乱れてる」
「幻聴じゃない。実際に聞こえてる音です」
言葉が出なかった。
ずっと、“自分がおかしい”と思ってた。
でも違った。
環境が、私を壊してた。
「この頭皮の状態も、それが原因です」
「ホルモンと自律神経の乱れで、角質が異常に増えてる」
やっと、理由がわかった。
全部が、繋がった。
そのあと、私は動いた。
録音をした。
時間も記録した。
医者の診断書ももらった。
管理会社に連絡した。
最初は、軽く流された。
「気のせいでは?」
——またそれか、と思った。
でも、今回は違った。
証拠を全部出した。
音のデータ。
測定結果。
診断書。
相手は、黙った。
最終的に、隣の部屋の設備が原因だと認められた。
防音も不十分だった。
私は引っ越した。
環境が変わった。
その夜——
久しぶりに、何も聞こえなかった。
朝、起きた時。
頭が、軽かった。
あの痛みは、消えていた。
頭皮も、少しずつ戻っていった。
——全部、繋がってた。
あの時、もしあの医者に会ってなかったら。
今もきっと、
「ストレスですね」って言われ続けてたと思う。
身体の異常は、嘘をつかない。
ただ、見えてないだけ。
気づいてないだけ。
だからこそ——
「おかしい」と思ったら、
絶対に流さないでほしい。
それ、自分のせいじゃないかもしれない。
本当の原因、
ちゃんとあるから。
——あなたは、“気のせい”で済まされてる違和感、ありませんか?
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