
中国人に水源地を買われた結果――その一報を最初に耳にしたとき、多くの人は「まさか」と思ったに違いない。だが、それは現実に起きていた出来事だった。そして、その中心にいたのが、熊本市議会議員・山本貴子である。
熊本は、日本でも珍しい「地下水100%」の都市だ。蛇口をひねれば出てくる水は、長い年月をかけて大地に蓄えられた天然の恵み。その価値は計り知れず、一度失われれば簡単には元に戻らない。だからこそ、水源地は「守るべき命綱」でもあった。
その水源地のすぐ近くの土地が、ある日、外国資本――しかも中国人名義で買われていたという事実が発覚する。
最初に報じたのは地元紙だった。
記事には、「えづこ公園周辺の土地が中国資本に取得されている」と書かれていた。しかし当時、それはまだ一部の人間しか知らない“静かな異変”に過ぎなかった。
山本がこの問題を知ったのは、それからしばらく後のことだった。近所の住民が新聞記事を持ってきて、「こんなの知ってる?」と問いかけてきたのがきっかけだった。
その瞬間、彼女の中で何かが弾けた。
「これは、放置してはいけない」
そう直感したという。
調査を進めると、違和感はすぐに浮かび上がった。登記上の所有者は個人名。しかし、その名前は明らかに中国系で、住所は北京と記されていた。
さらに不可解だったのは、その住所を辿った先だった。
現地の記者が実際に訪れて確認したところ、そこには住宅など存在せず、企業ビルが建っていた。そしてその中には、「投資会社」の看板が掲げられていたという。
つまり、名義は個人でも、実態は組織的な投資の可能性が高い――。
山本は確信した。「これは単なる土地取引ではない」と。
2023年、彼女は熊本市議会議員に当選する。そして最初に取り組んだのが、この問題だった。
議員としての初仕事。それは、過去の記事を手繰り寄せ、記者に直接会い、事実関係を一つ一つ洗い直す“逆取材”から始まった。
同時に、彼女は地域を歩いた。住民一人ひとりに事情を説明し、危機感を共有していった。
そんな中で、ある人物と出会う。
地元に住む一人の医師だった。
事情を聞いた医師は、顔色を変えてこう言った。
「それは絶対に見過ごせない。もし売りに出る土地があれば、私が買い戻したい」
その言葉は、単なる感情論ではなかった。行動はすぐに現実となる。
やがて、水源地に隣接する重要な土地が競売にかけられる。落札したのは一度は別の不動産業者だったが、その後、中国側が買収に動くという情報が入る。
そのとき、動いたのがあの医師だった。
最終的に、彼は約1億9000万円という巨額を現金で支払い、その土地を取得した。
地域の水を守るために――。
しかも、その土地は私利私欲のためではなく、無償で提供され、フリースクールとして活用されることになる。
一見すると、これで流れは止まったように見えた。
だが問題の本質は、まだ残っていた。
すでに中国側が取得していた土地は、そのまま残されていたからだ。
山本は議会でこの問題を取り上げる。最初の一般質問では、大きな反応は得られなかった。だが彼女は諦めなかった。
二度目の質問で、「外国資本による水源地取得」という核心を明確に突いた。
この一撃が、状況を動かす。
市長が反応し、条例の見直しが検討され始めたのだ。
その直後だった。
中国側が所有していた土地が、突如として売りに出される。
最初の価格は約2億4000万円。しかし買い手は現れない。
数ヶ月後、価格は1億8000万円まで下がる。それでも、誰も手を出さなかった。
理由は明白だった。
すでに周囲にはフリースクールが建ち、行政の監視も強まっている。さらに条例改正の動きも進んでいる。
「ここでは、もう自由に開発できない」
そう判断されたのだ。
結果として、その土地は“持っているだけで負担になる存在”へと変わっていった。
固定資産税を払い続けるしかない――そんな状況に追い込まれたのである。
この一連の出来事は、単なる土地問題ではなかった。
地域住民、政治、そして一人の決断が重なり合い、大きな流れを変えた“実例”だった。
山本は語る。
「行政は敵ではない。制度を変えれば、流れは変えられる」
対立ではなく、連携。感情ではなく、行動。
その積み重ねが、結果として地域を守る力になった。
一つの土地を巡る攻防は、やがて大きな教訓を残した。
地方であっても、声を上げれば変えられる。
そして――守るべきものがあるなら、人はここまで動けるのだということを。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=QXhlxRrBAK0,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]