中国が半導体関連の輸出規制をめぐり、WTOに提訴したことは一見すると国際ルールに基づいた正当な対応のように見える。しかし現実的に見れば、この提訴が状況を大きく変える可能性は極めて低い。
高橋洋一氏は、WTOという枠組みそのものが、加盟国の自発的なルール遵守を前提として成り立っている点を指摘している。安全保障や先端技術に関わる分野では、WTOには強制力がなく、仮に手続きが進んだとしても、各国の政策判断を覆す力はほとんど持ち得ない。
現在行われている半導体規制は、単なる貿易摩擦ではない。アメリカを軸に、日本、欧州諸国が連携して構築している、長期的かつ構造的な技術管理体制である。その本質は、完成品である半導体そのものではなく、製造に不可欠な中核技術と製造装置を管理する点にある。
半導体産業において決定的な競争力を左右するのは、最先端の製造装置、精密制御技術、工程ノウハウである。これらは世界でも限られた国と企業が握っており、日本とオランダが果たす役割は依然として極めて大きい。この現実が、規制体制の実効性を支えている。
そのため、中国がWTOに提訴したとしても、技術や装置が自動的に供給されることはない。国際機関の手続きと、企業が負う地政学的リスクや技術流出リスクは、全く別の次元で判断されているからである。
また、日本の大手製造業各社が、中国市場への依存度を段階的に下げ、生産・投資・技術配置を見直している動きも注目される。
これは一時的な政治対応ではなく、将来の不確実性を見据えた中長期的な戦略判断といえる。
現在の半導体を巡る対立は、もはや「自由貿易かどうか」という問題ではない。国家安全保障、技術主権、産業基盤の維持といった要素が複雑に絡み合い、国際ルールの影響力は相対的に低下している。
WTO提訴は形式的な意味を持つにとどまり、現実の半導体供給構造や国際的な包囲網を揺るがすものではない。世界の半導体秩序はすでに、法制度ではなく、技術の源流と装置支配によって形作られているのである。
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