
以前、香川県高松市の「イオンモール高松」を“日本一の崖っぷちプチイオンモール”として紹介したところ、予想以上の反響があった。見てくれた人には感謝しつつ、「イオンさんごめんなさい」と言いたくなるくらいの空気もあった。
ところが、コメント欄が次の火種を投げ込んできた。
「高松より、こっちの方がもっとヤバいよ」
名前が挙がったのは、千葉県富津市にあるイオンモール。じゃあ本当に行ってみよう――そうして現地に立った瞬間、結論は早かった。**高松より、こっちの方が悲惨だった。**外観だけで分かる“限界感”。いったい何が起きているのか。
場所は千葉県南部、富津市。東京や千葉市から車で約1時間で出られるので、距離だけ見ればそこまで不便ではない。最寄り駅(JR青堀駅)から徒歩約20分。ただ、駅の利用者数も施設の開業前後で大きく変わっていないため、「最寄り」というより“形式上そうなっているだけ”に近い。バスもあるが本数が少なく、基本的には車で行く施設だ。

このモールは1993年開業の3階建て。実はイオンモールとして千葉県1号店で、関東でも早い部類、国内でも古株に入る。イオンモールは“巨大施設”のイメージが強いが、厳密な定義はなく、一般には敷地5万㎡以上・専門店100以上が目安と言われる。ここはその中でも小型で、イオンモールの名が付く施設の中では小さい部類に入る。
中へ入ると、まず吹き抜けが出迎える。三角屋根の天窓など、90年代開業のモールに特有の造りが目立つ。1階はまだ人がいる。入口近くにレストランとフードコートが並んでいて、ここが“なんとか人の溜まり場”になっている。ただし、その周囲は空きテナントが目立つ。バリケードで塞がれた区画、店の跡がそのまま残る場所、ガチャコーナーで穴埋めされたスペース。かつて入っていたチェーン店(リンガーハットやサーティワンなど)も消え、外のマクドナルドも色褪せた看板で、どこか閉店前夜のような雰囲気すらある。自動ドアが壊れて“ただのドア”になっている箇所まであった。
さらに象徴的なのが、無印良品が入っていた大区画にアウトレット系家具店が入っている点だ。家賃収入は薄くても、広い空白を埋められる――衰退した商業施設でよく見られる構図である。
ペット触れ合い系が増えるのも同じ理由だ、と語られる。
そして「本番」は2階と3階だった。
2階に上がると、人影が一気に消える。解放感ある通路がむしろ虚しく、NPOや地元系の小規模テナント、健康サロンやギャラリーなどが点在するだけ。以前はオンデーズやライトオンのような全国チェーンもあったらしいが、今は面影が薄い。唯一の“耐える要素”として西松屋があり、子どもの遊び場で空きを埋めているのは、高松のケースと似ている。
一方で、カプコンが展開するアミューズメント施設(モーリーファンタジー系)が周辺の閉店で“侵食”し、巨大化している。メリーゴーランドがあり、毎日12時と13時の2回、無料で乗れる。ただ、稼働回数の少なさが逆に切ない。
3階はさらに極端だ。
目立つのは、2023年に入居した市立図書館。もともとユニクロがあった場所で、富津市に市立図書館がなかった事情もあり、念願の設置となった。しかも契約は「月額10万円・10年」という破格。空き区画と集客に悩むモール側と、予算が厳しい市側の利害が一致した形だ。休日は席が埋まるほどで、一定の集客効果もある。
ただし、それ以外の3階が“死んでいる”。イベントホールで中央の空白をごまかし、オフィス転用されたエリアは一般人お断りの空気が漂う。ATMも撤退し、シャッターが降りていた(撤退したのは京葉銀行やみずほ銀行では、という推測も添えられている)。

ここまで空洞化が進んだ最大の理由として挙げられているのが、2014年の「イオンモール木更津」開業だ。距離は車で約15分。大型商業施設としては異常に近く、商圏がもろ被りした。2007年のリニューアルで101店舗まで増え、無印・ユニクロ・サーティワン・スタバ・ドンキなど強いチェーンも揃っていた“全盛期”から、2010年代中盤以降に急速にテナントが減り、現在は約40店舗まで落ち込んだ。つまり、イオンモールがイオンモールを潰したという皮肉な構図になっている。
地元掲示板では「木更津開業のタイミングで閉める予定だったが、市民の要望で営業継続した」という噂もあるという。ただ噂レベルではあるものの、商圏人口が半減している状況で、この箱のサイズを維持する合理性は確かに薄い。
さらに未来の不安材料が、図書館の10年契約だ。
終了は2031年または2032年。このタイミングで施設の大きな判断(閉館・業態転換)が起きても不思議ではない、という見立てが語られる。実際、食品売り場には人が多く、スーパーとしての需要は残っている。だから「土地は手放さず、規模を落としてイオンタウンやソヨラにするのでは」という予想も出てくる。需要に対して“箱がデカすぎる”のが根本問題だからだ。
ただ、ここまで来ると逆に分かることがある。
「どこに行っても同じテナントでつまらない」という声は確かにある。でも、この施設を見ると、“同じようなテナントが揃っていること”が、どれだけ生活の安心を支えているかが浮き彫りになる。最盛期には休日の駐車場待ちが2時間という話もあるほど、地域の生活を変えた“革命”だった時代が確かにあった。
そして最後に残るのは、盛者必衰の現実だ。
最強に見えるイオンモールですら、時代と立地と競合の前では、イベントスペースや遊び場やオフィス転用で“延命”するしかない区画が生まれる。
この場所は、その「商業施設の終盤戦」を、やけに生々しく見せてくる。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=AK-uOD84D7A,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]